本当の「勝者」は誰だ。
スポンサーリンク
日本がロシアW杯でグループリーグを2位通過し、決勝リーグにコマを進めた。
しかも今大会、アジア勢唯一の16強。
日本を、そして世界を驚かせた。
思えば開幕2ヶ月前。
日本代表は直前の強化試合でも、格上とはいえ本戦出場を逃したチームに対して勝ちきれないゲームが続いていた。
固まらない選手起用とフォーメーション。
そして何よりの衝撃は、日本をワールドカップ本戦へと導いたハリルホジッチ監督の突然の解任。
急遽、西野氏が監督に就任というバタバタ劇。
下馬評では「3連敗するに違いない」と散々な叩かれよう。
W杯開幕直前、メディアの代表批判は目を覆いたくなるような記事で溢れ返っていた。
ちなみに日本の世界ランクは61位。
他、3カ国のFIFAランクは
・コロンビア(16位)
・セネガル(27位)
・ポーランド(8位)
素人目にみても、全敗してもおかしくないグループに入った。
それがどうだ。
グループリーグ、3戦合計で1勝1分1敗の堂々たる闘いぶり。
勝点、得失点ともにセネガルと並んだが、「フェアプレーポイント」の差で日本が決勝リーグに進んだ。
さらに、今大会の決勝に進んだチームの中では、開催国のロシア(70位)に次ぐ二番目に低い世界ランクだった。
振り返ると開幕初戦。
南米の強豪コロンビア相手に2−1で勝利。
W杯史上、アジアのチームとして初の南米撃破という快挙を成し遂げる。
続く第2戦。
アフリカの強豪相手に、2度勝ち越されながらも2度追い付き2−2のドロー。
開幕前からバッシングを受けていた、本田選手の同点ゴールには心から震えた。
開幕前は全敗すると言われながら、開幕2戦で1勝1分で勝点4。
なんとグループ首位で最終戦を迎えた。
世界中のサッカーファンの中で、この順位を予想できた人間がどれだけいただろうか。
そして決勝トーナメント進出がかかる運命の第3戦ポーランド戦。
相手は、ドイツブンデスリーガ得点王のFWレバンドフスキ選手を擁する世界ランク8位という強豪。
しかし、まさかの開幕2連敗で予選敗退が確定している中で迎えた決戦。
これまでの2試合は、格上相手の対戦ということもあり日本代表には失うものはなく、ただ正面から思い切ってぶつかって行くことができた。
しかし最終戦は、日本代表に初めて失うものができてしまった。
「勝ちか引き分け以上なら自動的に決勝トーナメント進出、負ければもう1試合のセネガル-コロンビアの結果次第」という状況。
もっと細かくいうと、「日本代表が最終戦で敗れ、セネガル-コロンビアのゲームがドローで終わると得失点差で自動的に敗退が決まる」という状況であった
そして迎えた最終戦。
西野監督は、これまでのスタメンから6人を入れ替えるという奇策に出た。
当日の会場、ボルゴグラードの気温は35度。
これまでの選手の疲労を考慮しての選手起用でもあったと思われるが、これまで2試合でしっかり勝ち点を拾えていたスタメンを半分入れ替えるという策には本当に驚かされた日本のファンも多かったはず。
しかし、ゲームが始まるとそんな不安は一掃。
2トップの武藤選手と岡崎選手は勢力的に前線からプレスをかけ、中盤の山口選手も執拗なチェイシングからボールを奪取、司令塔柴崎選手のグラウンドを広く使うロングパスからは何度もチャンスが生まれた。
初先発のセンターバック槙野選手も懸命に身体を張って、前半レバンドフスキ含む強力ポーランド相手にほとんどチャンスを作らせなかった。
前半終了時点で、日本-ポーランド/セネガル-コロンビアのゲームも共に0-0。
このままゲームが終わればグループステージ通過という状況だった。
そして迎えた後半。
ポーランドが先制する。
この時点で、日本は点を取らなければ敗退という状況に追い込まれた。
必死に攻める日本代表。
しかし、他会場のゲームでコロンビアがセネガル相手に先制点をとると状況が一変。
後半30分、
日本0-1ポーランド
セネガル0-1コロンビア
このままゲームが終わると、セネガルと勝ち点/得失点差で並びはするが「フェアプレーポイント」のルールが適用され、イエローカードの枚数が日本が4枚、セネガル6枚と、カードの少ない状況のためかろうじて通過できる状況になった。
後半も残り15分。
ここで西野監督は思い切った賭けにでる。
最後の交代枠1枚を、このタイミングのためにとって置いたとでもいうように、キャプテン長谷部選手をピッチに送る。
そして、負けている状況にも関わらず日本代表に攻めることを「辞めさせた」。
守備に徹するよう、長谷部選手はじめ日本代表に指示をしたのだ。
もし、セネガルが同点に追いつくとその時点で敗退が決まる。
しかし西野監督は、セネガルがコロンビアに追いつくことはないと読み日本に守備を徹底するように指示した。
おそらくゲームを観ていた多くのサッカーファンは、この西野監督の采配、そして残り15分の「攻める気の無い」日本代表の姿に多くの不信感と不満を抱いたに違いない。
仮にセネガルが同点に追いついていたら、W杯史上最悪の逃げ腰監督というレッテルを貼られていたに違いない。
しかし、西野監督は賭けに勝った。
僕は心の底から興奮し、同時に西野監督の勝負勘と胆力に脱帽した。
試合後も、日本代表の戦い方や西野監督の戦術には批判が殺到していた。
賛否の分かれる難しいゲームであったことはいうまでもない。
しかし、0-1で負けている状況で、「負けてもいい」と日本代表チーム全員が意志統一し 最後まで時間稼ぎのボール回しに徹していたあの「組織全員で勝ちに行く」という姿勢は、他の国でもなかなか真似ができるものではない。
なぜか。
他のチームは世界ランク上位にいるというプライドがあり、選手としてもそんな羞恥を晒したくはないはずだからだ。
しかし、日本は世界ランクを見ても出場国の中では決して強豪とは言えない。
だからこそ、「日本らしく」戦った。
そしてゲームには負けたが賭けには勝った。
これもサッカー。
野球にも「敬遠」があるように、サッカーにもこういう戦い方がある。
多くの方に、サッカーの奥深さを知ってもらうこともできたに違いない。
たとえ他力本願でも、「グループリーグ突破」という至上命題はクリアした。
世界中のメディアからも批判は多く集まったが、それでも1サッカーファンとして、もう1試合日本代表のゲームが見れることは心から嬉しい。
決勝トーナメント初戦は、強豪ベルギー。
昨年11月の親善試合では0-1で破れている相手ではあるが、2002年の日韓W杯グループリーグでは2-2の引き分けている。
ベルギー戦も厳しいゲームが予想されるが、ぜひ名将西野監督の下、日本サッカー界史上初のW杯ベスト8に進んで欲しい。
次戦も全力で応援したい。
ガンバレ日本🇯🇵⚽️